船舶用業務無線の選択肢

2022年4月に知床の観光船が沈没、多くの方が亡くなった。この時に船から運航を管理する事務所への連絡手段として同業他社も含めてアマチュア無線を使う事が常態化していたと推測されている。海岸沿いで運行するために携帯電話の圏内を運行するため、特別な連絡手段を用意してなかったともいわれる。言うまでもなくアマチュア無線の業務利用は不適切である。

それでは、小規模な船舶による旅客業を営業する事業者が導入可能な無線システムは何なのだろうか。

今回の知床の例では、観光船の遊覧コースの最も港から遠い地点は直線距離で50km程あり、海岸線の陰に隠れて見通しでもないために安定した通信を行うには高出力が求められる。地上にてよく使われているVUHF携帯デジタル機の業務用システムでは対応できない。

ウトロ港には全部で5社の観光船事業者があるようだが、道東観光開発 「おーろら」「おーろらII」は国際VHFと27Mhz漁業 SSB 25Wが免許され、27Mhz SSB 25Wの海岸局もうとろと網走に2局流石に400名の大型船を運航しているし。国際VHFの海岸局は無し。道東観光開発 は従業員70名、資本金3,000万円。
有限会社知床ネイチャークルーズ「EVER GREEN 38」「EVER GREEN 」 は国際VHFの免許。海岸局は無し。ここはもう一隻運行しているがこちらは該当無し。他の事業者名で無線局情報を検索しても短距離用の無線局と船舶のレーダー用免許しかヒットせず。全国の同業他社も同様の状況と推察される。

国際VHF(156Mhz 25W)

船舶に搭載する業務無線としてまず取り上げられるのは、国際VHF。但し、船舶間と公的港湾管理組織との連絡を主に想定しており。事業者の事務所との業務連絡は想定されていない。海上保安庁とも連絡が可能であり非常時の連絡手段としては筆頭に挙げられるが日々の業務では使えないのではないか。

レジャー用としても推奨されているが、その場合の海岸局はマリンクラブなどの何らかの大規模な所属団体が開設する。個人及び関連している小規模事業者が海岸局を開設することは想定されていない。船舶間の衝突事故防止や海上保安庁等の公的機関からの指導が速やかに伝わることを目的としている。

明文化された規定は見つけられていないが固定周波数の割り当てが必要なために、事務所に設置する海岸局の開設に制限があるようだ。周波数資源を割り当てる理由が求められるのかもしれない。免許情報をみても一般事業者でVHF 25Wの海岸局が免許されているのは全国で30局ほどしかない。

総務省の資料では海岸局が266局となっているが、公共業務および低出力局も含むのではないか。他にも事業者による海岸局の開設は現実的ではないとの声が聞こえる。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/kaijo_senpaku/pdf/080513_2_sa2.pdf

国際VHFは世界的に共通仕様であるため、複数のメーカーから比較的安価で機器が販売されいる。ICOMの25W機で7万円ほど。

海上保安庁のVHF海岸局は

https://www.jsaf.or.jp/gaiyou/2008/vhf/08.pdf

27Mhz漁業用 SSB 25W

漁業用、船舶と漁業組合に無線局を開設する事が想定され。一般事務所や船舶が個人事業主とすると事業所である一般家庭での開設は想定されていないと思われる。漁業組合に所属する船が釣り船として運行する場合には、漁業に準じて運用が可能だろう。

道東観光開発が海岸局を二局開設しているように、これが行政的にはお勧めなんだろうなぁ。

三菱電機のTH-4055が27Mhz 25W SSB機だがつまみ等も既製品だしどう見ての少量生産品。お値段も高そう。

27Mhz漁業用 DSB 1W

FURUNO DR-100は1Wであり、見通しではない環境での通話距離は期待できない。

40Mhz漁業用 DSB 10W/5W

小規模事業者が事務所に海岸局を開設する事は想定されていない。

FURUNOの製品ラインナップを眺めると、DM-200 5W。平成20年認証。15年前の機種が現役らしい。

https://www.furuno.com/jp/products/radiotelephone/

デジタル業務無線(VUHF FM/Digital 5W)

主に携帯機でつかわれ。UHFで出力が5W、今回の観光船の運行コースをカバーする事はできない。155Mhz 5Wにハイゲイン外部アンテナをつければ届くかも?

マリンVHF(156Mhz 5W)

中途半端なシステム。国際VHFに統合される?どうも行政の失敗事例に思える。

1991年に法制化、国内独自仕様であるため機器が高価。20万円位?

2009年10月電波法の改正により、国内航行プレジャー船舶に国際VHFの搭載が非常に搭載しやすくなった。

衛星通信

  • 静止衛星

    • インマルサット:電話なので場所の通報など運行管理には向かない。通話料金も高いので非常用として搭載しいざと言うときも使えない可能性が高い。

    • スラーヤ

      • SoftBank 501TH :端末9万円、基本料金月額4,900円、通話160円/分

    • N-STAR : Docomo ワイドスター 月額基本料金 4,9000円、通話99円/30秒

  • IRIDIUM

    • ICOM IC-SAT100:衛星PTT無線機。個人的にはかなりお勧めだけど、端末も高価で衛星利用料もかかる。ちょっとコスト負担が大きい。端末20万円、月額8,000円。

    • au 月額基本料金5,900円 63円/20秒。

携帯電話

一番現実的で、これでいいじゃんと多くの人が思うだろう。しかし、同報性はないし。
日本の携帯電話事業者は巨額の投資をし基地局を設置しているので確かに人口が少ない地区であっても海岸からそれほど離れなければ使えてしまうのだろう。でもね。携帯電話網で構わないので、せめて自動的に船舶の位置を通報するシステム位は必要。

とりあえずの結論(2022/04/29 2000)

船舶には、25Wの国際VHF局。位置情報のAIS送信機能も備える。事務所にはこれらを受信する設備を設けるが無線局は開設しない。

所属する港湾もしくは同業他社で共同で国際VHFの海岸局を開設する。アンテナの設置場所に配慮すれば岬の先端付近、観光コースの最も遠いところでも通信は可能であろう。これに伴い、運行時の安全確認などの運行管理業務も海岸局を開設した団体が請け負う。まぁ、複数社でお金を出し合って運営する団体ってなかなかうまくいかないけどね。現状の船舶用無線行政は漁業組合を中心とした漁業を前提にしている。

港近辺での運行管理等の連絡用に351デジタル登録局の携帯無線機を数台導入する。残念ながらこれは港から10km程までしか届かないだろう。

資金に余裕があっても27Mhz SSB 25W局ではなくIRIDIUM PTTの導入が良いだろう。

電話と無線の違い

船舶ではどちらも電波を使うので無線であることには変わりないのだが、利用者目線での電話と無線の操作上の違いは重要。無線通信の特徴は同報性にある。同時に複数の箇所で受信できる、また着信操作が必要ない。

非常時だけに連絡するのではなく、通常運行が行われていることを適宜通報するには無線が優れている。また、他の関連事業者にも同時に情報が伝わる。

運航記録「海上運送法に基づく同社の安全管理規定では、船長が運航管理者に対し、決められた地点に達した時に通過時刻や天候、風速、波浪などについて連絡する必要がある。

公開された「KAZU I」の無線記録台帳には二時間程度の運行で7か所の位置通報の記入欄がある。

同報性

しかし、業務無線のシステムは基本的には特定事業者に閉じたものであり、異なる事業者間での通話を想定していない。

国際VHFの1Wハンディ機を地上で使っては駄目なのか?


アマチュア無線の利用が疑われる理由

  • 事務所の折れたアンテナが第一電波工業のX520M(144/430Mhz GP)に酷似。468Mhz簡易業務用では長すぎる。船舶側はSE100か?144Mhzであれば十分通信可能距離。

  • 簡易業務は基本的に他の事業者の通信を聞くことが出来ない。隣の会社が傍受し連絡をすることは考えにくい。

  • 「有限会社知床観光船」で免許情報を検索すると簡易無線467 MHzから467.4 MHzまで 6.25 kHz間隔の周波数65波5W 8局しか該当しない
    https://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?pageID=4&IT=J&DFCD=0000836004&DD=1&styleNumber=21

  • ゴジラ岩観光の従業員がアマチュア無線と明言
    https://www.youtube.com/watch?v=DrM0aCnnkds

  • 2022年5月11日 国土交通省からアマチュア無線の使用について昨年6月に是正指導を受けていたと報道される。

船舶間の通信はできない

免許情報をみると、漁船は国際VHF積んでいないし。観光船は漁業27Mhzを積んでいるけど漁協とは周波数が違う。

27.524Mhzは全国共通波

10:00 KAZUI出港

11:00 KAZU Iから「カムイワッカの滝の上にクマが横になっていた」

11:40 KAZU III 帰港

13:13 KAZUi浸水

14:00 KAZUI「船が30度傾斜している」

乗客の携帯電話により海上保安庁へ通報


1985年2月 進水 ほうらい汽船 ひかり八号

2002年4月 岡山県で旅客船業を営むA社 総トン数19トン、長さ11.86m、幅4.15m、深さ1.52m

日生~牛窓を行き来する旅客船 ほうらい汽船 ひかり八号

2004年10月 大阪府の個人に所有権が移転

2005年10月 「有限会社知床遊覧船」に所有権が移転

2015年改造 長さ12.14m、深さ1.62mに変更


1996年9月 民宿「しれとこ村」設立

2007年 桂田氏、斜里町の町議だった 父の後を継いで「有限会社しれとこ村」の社長。当時の旅館の名前「国民宿舎桂田」

2014年 社長就任?

2016年5月 知床遊覧船買収、コンサルタントの小山昇の指示?

2017年夏 小山昇

  • 知床ウトロ温泉 流氷と温泉の宿 海に桂田

  • shiretoko HOSTEL hanare.

  • しれとこ村

  • ホテル 地の涯


2020年7月?豊田氏勤務

2021年3月 前船長退職

2021年6月11日 KAZU I座礁事故