Sタイヤの使いこなしの難しさ

Sタイヤ、一般道も走行可能ではあるが基本的にサーキット用のタイヤ。絶対的なグリップ力がスポーツラジアルよりも高いので当然サーキットでのラップタイムも向上するはず。でも、意外と伸びない事も多い。それはスポーツラジアルとは違う使い方が必要だからと思います。

タイヤは基本的にゴムで出来ています、本来ゴムは温度に対してとても敏感で少しの温度差でその性質が大きく異なります。Sタイヤは単純にグリップ力が高く磨耗が激しいと言う訳では無く想定している温度域が高いことに注目する必要があります。サーキット走行時に、横方向に滑らせた時はタイヤの表面温度は上昇します。Sタイヤは比較的高い温度で安定した性能を発揮するように設計されていますので、サーキット走行時に横方向の滑り量が多くなり表面温度が上昇しても性能変化が少なく、コントロールしやすいタイヤです。しかし、それに甘えていてはタイムは伸びません。タイムを稼ぐには縦方向のGを多く稼ぐべきで横方向のGが多く出ていると言うことはタイムに関係ない成分にパワーを消費していることになるからです。

スポーツラジアルは、Sタイヤよりも想定温度域が低いために横方向に滑らせて温度が上昇した時に性能範囲を超えてグリップが急速にダウンする傾向があります。これが、サーキット走行時では滑らせた時にある一定以上の領域でいきなりグリップがなくなり制御不能なスピン状態を招く事になります。

逆に言えば、急激なグリップダウンは横方向への滑らす量が過大であることを知らせている訳です。これをうまく把握すると絶対的なグリップ力では劣るSタイヤに遜色ないタイムを出すことが出来ます。

Sタイヤは、制御しやすいからといって横滑りを多用するとタイムが伸びません。感覚的にはスポーツラジアルよりも横滑りを抑えたライン選択とドライビングをする必要があります。

アマチュアのドライバーは普段はスポーツラジアルで練習し、タイムアタックの大会などの時だけSタイヤを投入する事がよくあります。しかし、上記の走行スタイルの違いを積極的に意識して行わないと全くタイムが向上しないのです。